退職金は一時金か年金か|50代が知りたい受け取り方の違い
結論:退職金を「一時金」と「年金」のどちらで受け取るのが得かは、一律には決まりません。税金の扱い(一時金は退職所得控除、年金は公的年金等控除)に加えて、公的年金を受け取り始める時期、生活費、保有資産によって変わるからです。まず「自分の会社で選べる受け取り方」を確認し、退職後の家計全体で比べます。
「退職金は、一時金でもらうのと年金でもらうのでは、どちらが得ですか?」
退職を考える50代の方からすると、とても気になる問題です。
しかし、実はこの質問に「一時金のほうが得」「年金のほうが得」と単純に答えることはできません。
なぜなら、退職金の受け取り方によって変わるのは、受け取る総額だけではないからです。
税金、社会保険、資産運用、毎月の生活費、そして老後の資産残高まで変わってきます。
今回は、退職金の代表的な3つの受け取り方を整理してみます。
※制度は2026年10月時点の国税庁の公開資料(令和8年4月1日現在の法令等)に基づきます。実際の税額は、勤務先や税務署、税理士に確認してください。
退職金を一時金で受け取ると、税金はどうなる?
もっとも分かりやすいのが、退職時にまとまったお金を一括で受け取る方法です。
一時金の場合、原則として「退職所得」として扱われ、一定の条件のもとで退職所得控除を利用できます。
退職所得控除は、勤続年数に応じて計算されます。
- 勤続20年以下:40万円×勤続年数(80万円に満たない場合は80万円)
- 勤続20年超:800万円+70万円×(勤続年数-20年)
勤続年数の1年未満の端数は、1年に切り上げます(国税庁 No.1420、令和8年4月1日現在の法令等)。
そのため、長期間勤務してきた会社員にとっては、退職金のかなりの部分が課税対象にならないケースもあります。
さらに、退職所得は原則として、
(退職金-退職所得控除)×1/2
という計算で課税対象となる退職所得を求めます。
※勤続年数などによって取り扱いが異なる場合があります。例えば、勤続5年以下の方は、1/2の扱いが変わることがあります。また、過去に退職金などを受け取っている場合は、控除額の計算が変わることがあります(国税庁)。
計算の流れ(仮の例)
退職金2,000万円、勤続30年の場合を、仮の例として計算します。
- 退職所得控除:800万円+70万円×(30年-20年)=1,500万円
- 課税の対象になる退職所得:(2,000万円-1,500万円)×1/2=250万円
この例では、退職金2,000万円のうち、課税の対象になるのは250万円です。実際の税額は、この金額をもとに計算します。勤続年数や他の退職金の有無で結果は変わるため、あくまで仕組みを知るための例です。
なお、勤務先に「退職所得の受給に関する申告書」を出さないと、退職金の20.42%が源泉徴収されます(国税庁 No.2732、令和8年4月1日現在の法令等)。提出が必要かどうかは、勤務先で確認してください。
退職金にかかる税金の仕組みを、短いQ&Aで確認したい方は、「退職金にかかる税金の仕組みはどうなっていますか?」もご覧ください。
税制上のメリットが期待できる一方で、注意したいのは「まとまったお金をどう管理するか」です。
例えば退職金2,000万円を受け取ったとしても、それを生活費として少しずつ使うのか、預金として置いておくのか、投資に回すのかによって、その後の資産形成は大きく変わります。
つまり、
一時金は「受け取った後の資金管理」が重要
ということです。
退職金を年金として受け取ると、税金はどう変わる?
もう一つが、退職金の全部または一部を年金形式で受け取る方法です。
例えば、
「60歳から10年間、毎年200万円」
といった形です。
一時金と比べると、まとまった資金を一度に受け取らないため、生活費として計画的に使いやすいというメリットがあります。
一方で、税金の考え方が変わります。
国税庁は、過去の勤務により会社などから支払われる年金や、確定給付企業年金の年金を、公的年金等に含めています。年金として受け取る場合は、「公的年金等に係る雑所得」として、公的年金等控除の対象になります(国税庁 No.1600、令和8年4月1日現在の法令等)。
ここで重要なのが、
退職金の年金だけで税金を考えてはいけない
ということです。
例えば、65歳以降に公的年金を受け取りながら企業年金も受け取る場合、それらを合わせた収入によって課税関係が変わります。
「年金で受け取ったほうが税金が安い」とは、必ずしも言えません。
一時金と年金は、併用できる?
実は、判断に迷ったときに検討したいのが「併用」です。
例えば、
- 退職金1,500万円 → 一時金
- 残り500万円 → 年金
といった受け取り方です。
一時金である程度まとまった資金を確保しながら、残りを年金として受け取ることで、資金管理のしやすさと安定した収入の両方を狙うことができます。
ただし、実際にどのような選択ができるかは、勤務先の退職金制度や企業年金制度によって異なります。
そのため、まず確認したいのは、
「自分の会社では、どんな受け取り方が選べるのか?」
ということです。
では、結局どれがいいのか?
ここが一番重要です。
退職金の受け取り方は、
「税金が一番安くなる方法」だけで決めるべきではありません。
例えば、60歳で退職して65歳から公的年金を受け取る人なら、60~64歳の5年間をどう生活するかを考える必要があります。
一方で、65歳以降も十分な収入があり、資産をあまり使わない人なら、受け取り方の考え方は変わります。
さらに、
- 現在の金融資産はいくらあるのか
- 住宅ローンは残っているのか
- 退職後に働くのか
- 公的年金はいくら受け取れるのか
- 毎年いくら生活費が必要なのか
- 退職金を運用するのか
- 何歳まで資産を残したいのか
によっても、最適な選択は変わります。
つまり、退職金だけを切り取って考えるのではなく、
「退職後の家計全体の中で、退職金をどう受け取るか」
を考えることが重要なのです。
一時金と年金の違いを、要点だけ先に確認したい方は、「退職金は「一時金」と「年金」どちらで受け取るべきですか?」もあわせてご覧ください。
よくある質問
Q. 結局、一時金と年金はどちらが得ですか。
A. 一律の答えはありません。税金だけでなく、公的年金の開始時期、生活費、保有資産、運用の方針などによって変わります。
Q. 「退職所得の受給に関する申告書」を出さないと、どうなりますか。
A. 退職金の20.42%が源泉徴収されます(国税庁)。提出の要否や期限は、勤務先で確認してください。
Q. 一時金と年金の併用はできますか。
A. 勤務先の退職金制度や企業年金制度によります。まず、人事部門や制度の規定で、選べる受け取り方を確認してください。
Q. 退職所得控除は、いくらですか。
A. 勤続20年以下は「40万円×勤続年数(80万円に満たない場合は80万円)」、勤続20年超は「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」で計算します。勤続年数の1年未満の端数は、1年に切り上げます(国税庁 No.1420、令和8年4月1日現在の法令等)。過去に退職金などを受け取っている場合は、控除額の計算が変わることがあります。
Q. 年金で受け取る場合、税金はどう扱われますか。
A. 退職金を年金形式で受け取る場合は、「公的年金等に係る雑所得」として、公的年金等控除の対象になります。公的年金など他の年金収入と合わせて課税関係が変わるため、「年金のほうが税金が安い」とは限りません(国税庁 No.1600、令和8年4月1日現在の法令等)。
まとめ
退職金の受け取り方には、大きく分けて、
①一時金
②年金
③一時金+年金の併用
があります。
一時金には退職所得控除などの税制上のメリットがある一方、まとまった資金を自分で管理する必要があります。
年金は安定した収入を確保しやすい一方、他の年金収入などとの関係で税負担が変わる可能性があります。
そして、併用という選択肢もあります。
だからこそ、
「一時金と年金、どちらが得ですか?」
という問いよりも、
「自分の老後の家計にとって、どの受け取り方が合っているのか?」
と考えることが大切です。
退職金は、会社員人生の最後にもらうお金ではありません。
これからの人生を支える、老後資金の一部です。
税金だけではなく、生活費・公的年金・保有資産・運用・働く期間まで含めて考える。
それが、退職金の受け取り方を決めるときの基本だと私は考えます。
受け取り方を、生活費・年金・保有資産まで含めて整理したい方は、退職・セカンドキャリア設計のページもご覧ください。
参考にした公的資料
- 国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」(令和8年4月1日現在法令等)
- 国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」(令和8年4月1日現在法令等)
- 国税庁「No.2732 退職手当等に対する源泉徴収」(令和8年4月1日現在法令等)
確認日は2026年10月9日です。
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金子英司(CFP®・FP1級)
金子FP事務所代表。28年間、営業・宣伝・マーケティングに携わり、50代で早期退職。資産運用と人生設計をテーマに、意思決定のための情報整理を発信しています。
※これは一般的な情報提供であり、個別の投資助言ではありません。