50代の早期退職と定年退職、退職金の手取りはいくら違う?計算例で比べる
50代で早期退職すると、会社の制度によっては、定年退職より退職金が多くなることがあります。ただし、税金のかかり方は「勤続年数」で決まる控除の大きさに左右されます。勤続が短い早期退職は控除が小さく、退職金が増えた分の一部が、税金として引かれます。
結論:退職金が多くても、手取りの差は小さくなることがある
この記事では、国の統計の平均額を使い、早期退職(勤続33年)と定年退職(勤続38年)の手取りを、仮の例で比べます。結論を先に書くと、次のとおりです。
- 早期退職の例では、退職金2,266万円に対して、税金は約46万円、手取りは約2,220万円です。
- 定年退職の例では、退職金2,037万円は退職所得控除(2,060万円)の範囲内に収まり、税金は0円です。
- 退職金は早期退職のほうが約229万円多く、手取りでは約183万円の差になります。
数字はすべて「仮の例」です。実際の金額は、勤め先の退職金制度と勤続年数で変わります。
退職金の税金は?退職所得控除のしくみ(おさらい)
退職金は、給与とは別に、退職所得として計算します。国税庁の説明では、次の式になります。
- 退職所得 =(退職金の額 − 退職所得控除額)× 1/2
退職所得控除額は、勤続年数で決まります。
- 勤続20年以下: 40万円 × 勤続年数(80万円に満たない場合は80万円)
- 勤続20年超: 800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年)
役員等で勤続5年以下の場合や、役員等以外で勤続5年以下の場合は、1/2の扱いが変わります。この記事の例は、勤続が5年を大きく超える会社員を想定しているので、この例外は使いません。
税額は、退職所得に所得税(復興特別所得税を含む)と住民税をかけて決まります。退職金の税金のしくみは、退職金にかかる税金の仕組みでも説明しています。
計算の前提(すべて仮の例です)
- 退職金の額: 厚生労働省「令和5年就労条件総合調査」(令和4年1年間の退職者)の、大学・大学院卒(管理・事務・技術職)の平均額を使います。早期優遇退職は2,266万円、定年退職(勤続35年以上)は2,037万円です。
- 勤続年数: 統計に載っていないため、仮に置きました。22歳で入社した場合、55歳の早期退職で勤続33年、60歳の定年で勤続38年です。
- 受け取り方: 全額を一時金で受け取るものとします。年金で受け取る場合は、税金のかかり方が変わります。
- 税金: 退職所得の受給に関する申告書を提出した場合の計算です。所得税は国税庁の速算表、復興特別所得税は2.1%、住民税は標準税率の10%(市町村民税6%+道府県民税4%)で計算しました。
統計の平均額は、いろいろな会社・退職者をならした数字です。早期優遇退職は、退職者全体の5.7%と少数なので、実際の金額は大きくばらつきます。自分の会社の退職金規程と、人事から出る試算を、先に確認してください。
計算例1:早期退職(勤続33年・退職金2,266万円)
- 退職所得控除額: 800万円 + 70万円 ×(33 − 20)=1,710万円
- 退職所得: (2,266万円 − 1,710万円)× 1/2 =278万円
- 所得税+復興特別所得税: 278万円 × 10% − 9万7,500円 =18万500円。これに2.1%の復興特別所得税を加えて、約18万4,290円
- 住民税: 278万円 × 10% =27万8,000円
- 税金の合計: 約46万2,290円
- 手取り: 約2,219万7,710円(約2,220万円)
計算例2:定年退職(勤続38年・退職金2,037万円)
- 退職所得控除額: 800万円 + 70万円 ×(38 − 20)=2,060万円
- 退職金(2,037万円)が控除額(2,060万円)より小さいので、退職所得は0円
- 税金は0円で、手取りは2,037万円です。
比べてみると
早期退職(仮) | 定年退職(仮) | |
|---|---|---|
勤続年数 | 33年 | 38年 |
退職金(統計の平均) | 2,266万円 | 2,037万円 |
退職所得控除 | 1,710万円 | 2,060万円 |
税金の合計 | 約46万円 | 0円 |
手取り | 約2,220万円 | 2,037万円 |
退職金は約229万円の差ですが、手取りの差は約183万円です。差が縮む理由は、控除額の差(350万円)です。
ここで注意したいのは、この比較が「同じ人が、辞める時期を変えた場合」ではないことです。実際には、早期退職を選ぶと、定年までの給与や厚生年金の加入期間もなくなります。退職金の手取りだけで、有利・不利は決められません。早期退職後のお金の全体像は、50歳で早期退職するには、いくらあれば足りる?辞める前に確認したい5つのお金や、早期退職すると資産は何歳まで持つ?「資産寿命」の計算方法で整理しています。
退職金の額が違うと、税金はどう変わるか
「自分の退職金は、平均とだいぶ違う」という方のために、勤続33年で退職金の額だけを変えた場合の目安です。
退職金 | 退職所得 | 税金の合計 | 手取り |
|---|---|---|---|
1,500万円 | 0円 | 0円 | 1,500万円 |
2,000万円 | 145万円 | 約21万9,000円 | 約1,978万円 |
2,266万円 | 278万円 | 約46万2,000円 | 約2,220万円 |
3,000万円 | 645万円 | 約152万6,000円 | 約2,847万円 |
税金の合計は、所得税(復興特別所得税を含む)と住民税の合計で、千円未満を四捨五入しています。
勤続33年なら、退職金が約1,710万円までは、税金がかかりません。それを超えた金額の半分が、課税の対象になります。
手取りに差が出る3つのポイント
- 割増退職金(上乗せ分)の有無: 早期退職制度には、通常の退職金に上乗せされる割増分がある場合があります。割増分の税金の扱いは、勤め先の説明や税務署の案内で確認してください。
- 受け取り方: 一時金か、年金か、併用かで、税金も社会保険料の扱いも変わります。違いは、退職金は一時金か年金か|50代が知りたい受け取り方の違いで整理しています。
- 申告書の提出: 「退職所得の受給に関する申告書」を勤め先に出さないと、支払額の20.42%が源泉徴収され、確定申告で精算することになります。
辞める前に確認したいこと
- 勤め先の退職金規程(早期退職の場合の計算方法、割増の有無)
- 退職日と勤続年数(退職所得控除は、勤続年数の端数を切り上げて計算します)
- 退職金の受け取り方(一時金・年金・併用)
- 退職金以外の収入(再就職の見込み、失業給付、年金の開始時期)
- 退職後の健康保険・年金の手続き(退職後の健康保険と年金の手続き)
自分の条件で試算したい場合は、退職後のお金のシミュレーションも使えます。
まとめ
- 早期退職は、退職金が多くなっても、控除が小さいため、税金がかかることがあります。
- 統計の平均を使った仮の例では、退職金の差は約229万円、手取りの差は約183万円でした。
- 手取りは、勤続年数と退職金の額、受け取り方で変わります。自分の退職金規程で、先に試算することが大切です。
参考にした公的資料
- 国税庁 タックスアンサー No.1420「退職金を受け取ったとき(退職所得)」(令和8年4月1日現在法令等)
- 国税庁 タックスアンサー No.2260「所得税の税率」(令和8年4月1日現在法令等)
- 厚生労働省「令和5年就労条件総合調査 結果の概況」(第21表・第22表・第23表)
- 江東区「退職所得に対する住民税」(2025年11月19日更新。住民税の計算方法の例として参照)
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金子英司(CFP®・FP1級)
金子FP事務所代表。28年間、営業・宣伝・マーケティングに携わり、50代で早期退職。資産運用と人生設計をテーマに、意思決定のための情報整理を発信しています。
※これは一般的な情報提供であり、個別の投資助言ではありません。