金子FP事務所
早期退職・資産寿命シミュレーション

早期退職すると資産は何歳まで持つ?「資産寿命」の計算方法

結論:早期退職したあと資産が何歳まで持つかは、「資産がいくらあるか」ではなく、「毎年の不足額(生活費-退職後の収入)」で決まります。目安は「資産 ÷ 毎年の不足額」です。仮の例(50歳で退職、資産3,000万円、年間生活費400万円)では、収入がなければ約7.5年(57歳ごろまで)、月10万円働けば約10.7年(60歳を過ぎたころまで)です。年金・税金・社会保険料・運用・インフレは入れていない、仮の計算です。

「50代で会社を辞めたい。でも、今の資産で本当に大丈夫か?」

早期退職を考えたとき、多くの人が最初に確認するのは「資産がいくらあるか」です。

「3,000万円あれば大丈夫」
「5,000万円あれば安心」

そんなYouTube動画を見かけることもあります。

しかし、早期退職できるかどうかは、資産額だけでは判断できません。

同じ3,000万円を持っていても、年間生活費が300万円の人と450万円の人では、資産の減り方は大きく違います。

さらに、退職後に月10万円働くのか、まったく働かないのか。
年金を何歳から受け取るのか。
資産をどの程度運用するのか。
インフレがどの程度進むのか。

こうした条件によって、結果は大きく変わります。

そこで重要になるのが、「資産寿命」という考え方です。


早期退職すると、資産は何歳まで持つ?

早期退職を考えるとき、

「金融資産が3,000万円あります」

という情報だけでは、十分な判断はできません。

本当に知りたいのは、

「この資産で何歳まで生活できるのか?」

ではないでしょうか。

例えば50歳で3,000万円の資産があったとしても、年間生活費が400万円なら、単純計算では7~8年程度で使い切ってしまいます。

もちろん実際には、退職後の収入や年金、運用益などがあります。

だからこそ、

資産+収入+支出+年金+運用

をまとめて考える必要があります。

これが「資産寿命」を考えるということです。


資産寿命の計算には、どんな数字が必要?

資産寿命をシミュレーションするときは、資産額だけではなく、いくつかの数字を使います。

例えば、

  • 現在の年齢
  • 退職予定年齢
  • 現在の金融資産
  • 退職金
  • 年金
  • 年金を受け取り始める年齢
  • 退職後の収入
  • 老後の生活費
  • 運用利回り
  • インフレ率

などです。

つまり、

「いくら持っているか」から考えるのではなく、「これから何が入ってきて、何が出ていくのか」から考える。

この視点が重要です。

当事務所の資産寿命シミュレーションが、どんな前提で計算しているかは、「資産寿命シミュレーションはどんな前提で計算していますか?」にまとめています。


資産寿命は、どう計算する?(仮の例)

資産寿命は、次の順番で、おおまかに計算できます。

  1. 毎年の不足額を出す:年間生活費 − 退職後の毎年の収入(年金を受け取る前の期間は、年金を入れません)。
  2. 資産 ÷ 毎年の不足額 で、資産が持つ年数の目安を出す。
  3. 退職した年齢に足して、何歳ごろまで持つかを見る。

仮の例で試してみます。実在の数字ではなく、年金・税金・社会保険料・運用・インフレは、計算に入れていません。年金は、受け取り始める前の期間だけを見ているためです。

前提:50歳で早期退職。金融資産は3,000万円。年間生活費は400万円。

  • ①完全リタイア(収入なし):毎年の不足額は400万円。3,000万円 ÷ 400万円 = 7.5年。57歳ごろまでです。
  • ②月10万円(年120万円)働く:毎年の不足額は280万円。3,000万円 ÷ 280万円 = 約10.7年。60歳を過ぎたころまでです。
  • ③②に加えて、生活費を月3万円(年36万円)減らす:毎年の不足額は244万円。3,000万円 ÷ 244万円 = 約12.3年。62歳ごろまでです。

この例は、年金を受け取り始める前の期間だけを見ています。年金を受け取り始めてからの資産の減り方は、年金額や受け取り方によって変わります。だからこそ、働き方、生活費、退職の時期、年金の受け取り方を組み合わせて、条件を変えて試します。年金を受け取り始める年齢の違いは、次の節で見ます。


年金は何歳から受け取ると、資産寿命の見え方はどう変わる?

ここまでの仮の例は、年金を受け取り始める前の期間だけを見ていました。実際には、年金を何歳から受け取るかによって、資産寿命の見え方が変わります。

公的年金の老齢年金は、受給資格期間(保険料を納めた期間などを合わせた期間)が10年以上あるなどの条件を満たすと、原則として65歳から受け取れます。ただし、受け取り始める年齢を、60歳から75歳までの間で選べる仕組みがあります(生まれた年などにより異なる場合があります。出典は下の注)。

  • 繰上げ受給:60歳から65歳になるまでの間に、受け取り始める方法です。年金額は減り、減額率は最大24%(0.4% × 繰上げ請求月から65歳に達する日の前月までの月数)です。減額された年金を生涯受け取ることになり、繰上げの請求は取り消せません。昭和37年4月1日以前に生まれた方は、減額率が異なります。
  • 繰下げ受給:66歳から75歳までの間に、受け取り始める方法です。年金額は増え、増額率は最大84%(0.7% × 65歳に達した月から繰下げの申出月の前月までの月数)です。増額率は生涯変わりません。

仮の例で、金額の違いを見てみます。実在の数字ではなく、65歳から受け取る場合の年金額を、年120万円と仮に置いたものです。税金・社会保険料は計算に入れていません。加給年金・振替加算は含めず、繰下げで待っている間に厚生年金に加入する場合などは、計算が変わります。

  • 60歳から受け取る(繰上げ):減額率は0.4% × 60か月 = 24%。120万円 × (1 − 0.24) = 年91.2万円。
  • 65歳から受け取る:年120万円。
  • 70歳から受け取る(繰下げ):増額率は0.7% × 60か月 = 42.0%。120万円 × (1 + 0.42) = 年170.4万円。

年金額が大きくなる受け取り方でも、受け取り始めるまでの期間は、年金が入りません。その間の生活費は、貯蓄や仕事の収入などでまかなうことになり、先ほどの「毎年の不足額」が続く期間が長くなります。反対に、早く受け取り始めると、年金が入る時期は早くなりますが、毎年の年金額は小さくなります。つまり、受け取り始める年齢を変えると、「不足額が続く期間」と「年金が入ってからの年金額」の両方が変わり、資産寿命の見え方も変わります。

なお、加給年金(厚生年金の加入期間が20年以上あるなどの人が65歳になったとき、生計を維持している配偶者や子がいる場合に加算されるもの)や、振替加算(加給年金の対象だった配偶者が65歳になったあと、その配偶者自身の老齢基礎年金に加算されるもの。一定の条件があります)は、繰下げをしても増額の対象になりません。また、繰下げで待っている間は、加給年金額や振替加算を受け取れません。配偶者の状況によっては、この点も確認が必要です。

このほか、繰上げ・繰下げには、障害年金の請求や、税金・保険料への影響など、注意点があります。手続きの前に、日本年金機構の各ページで確認してください。

どの年齢で受け取るのがよいかは、健康状態、働き方、ほかの収入、家族の状況などによって変わります。この記事では、何歳がよいとは言えません。受け取り方を変えたときの違いを、条件を変えて試す材料として、シミュレーションを使ってみてください。詳しくは、50代で早期退職すると、年金はどう変わる?繰下げ受給と加給年金の考え方で整理しています。

【出典】日本年金機構「老齢年金」(2023年3月1日更新、2026年10月10日確認)、「年金の繰下げ受給」(2026年8月12日更新、2026年10月10日確認)、「年金の繰上げ受給」(2024年8月19日更新、2026年10月10日確認)、「加給年金額と振替加算」(2026年9月30日更新、2026年10月10日確認)。


退職後に少し働くと、資産寿命はどう変わる?

50代で早期退職を考える場合、次に重要なのが退職後の収入です。

例えば、

A:完全リタイア

退職後の収入は0円

B:ゆるく働く

月10万円の収入

C:しっかり働く

月20万円の収入

この3つでは、資産の減り方が大きく変わります。

月10万円なら年間120万円。

月20万円なら年間240万円。

仮に10年間続けば、

月10万円 → 1,200万円

月20万円 → 2,400万円

の収入になります。

もちろん税金や社会保険、働く期間などを考える必要がありますが、早期退職後の「少し働く」という選択肢には、資産寿命を延ばす大きな効果があります。

だから、

「会社を辞める=一切働かない」

と考える必要はありません。

「どのくらい働けば、自分が望む生活を維持できるのか」

という考え方もできます。


生活費を減らすと、資産寿命はどう変わる?

もう一つ重要なのが生活費です。

例えば年間生活費が450万円だった人が、

年間400万円にできれば50万円。

年間350万円にできれば100万円。

毎年の資産流出を抑えられます。

早期退職というと、

「もっと運用して資産を増やさなければ」

と考えがちです。

しかし、資産寿命を延ばす方法は運用だけではありません。

収入を増やす。

支出を減らす。

退職時期を変える。

年金との関係を考える。

こうした複数の方法があります。


運用利回りを変えると、資産寿命はどう変わる?

資産を運用しながら取り崩す場合、運用利回りも資産寿命に影響します。

例えば、

  • 運用しない
  • 年2%で運用する
  • 年4%で運用する

など、条件を変えて比較できます。ここで挙げた「年2%」「年4%」は、比べ方を示すための仮の数字です。将来の利回りの見込みや、目安として示すものではありません。

ただし、ここには注意が必要です。

「年4%で運用できるから大丈夫」と考えるのは危険です。

実際の運用では、毎年同じ利回りになるわけではありません。

相場が上昇する年もあれば、大きく下落する年もあります。

また、物価が上昇すれば、同じ生活をするために必要なお金も増えていきます。

そのため、シミュレーションは「未来を当てるため」のものではありません。

課税口座(利益に通常どおり税金がかかる口座)、iDeCo(個人型確定拠出年金)、NISA(少額投資非課税制度)など、税の扱いが違う口座を持つ場合は、どの順番で取り崩すかによっても結果が変わります。くわしくは「老後資金は取り崩す順番で結果が変わりますか?」をご覧ください。


資産寿命のシミュレーションは、何に使えばよい?

では、資産寿命のシミュレーションを何に使えばいいのでしょうか。

私は、「正解を出すため」ではなく、「意思決定するため」に使うものだと考えています。

例えば、

完全リタイアすると資産は何歳まで持つ?

↓

月10万円働いたらどうなる?

↓

生活費を月3万円減らしたらどうなる?

↓

退職時期を2年遅らせたらどうなる?

このように条件を変えていきます。

すると、

「自分にとって現実的な早期退職とは何なのか」

が少しずつ見えてきます。

「会社を辞めるか、辞めないか」という二択ではありません。

いつ辞めるのか。

どのくらい働くのか。

どのくらい使うのか。

どのくらいの資産を残したいのか。

こうした選択肢を数字で比較していくのです。


「資産が○歳で尽きる」は失敗ではない

ここも重要なポイントです。

シミュレーションをして、

「80歳で資産が尽きる」

という結果が出たとします。

これだけを見て、

「失敗だ」

と考える必要はありません。

例えば、

90歳まで資産を残したいのか。

85歳まで持てば十分なのか。

最後まで一定額を残したいのか。

によって、必要な資産額も生活設計も変わります。

大切なのは、

自分がどんな人生を送りたいのかを先に考え、そのために必要な資金を逆算すること。

資産寿命のシミュレーションは、そのための材料です。


まず、自分の4つの数字を書き出してみる

いきなり複雑な計算をする必要はありません。

まずは、

①現在の金融資産

②年間生活費

③退職後の収入

④将来の年金

この4つを書き出してみてください。

そして、

「今の資産と今後の収入で、何歳まで生活できそうか?」

を考えてみる。

これだけでも、早期退職に対する見方が変わるかもしれません。


早期退職で本当に考えるべきこと

早期退職を考えるとき、

「資産はいくら必要?」

という問いから始める人は多いと思います。

しかし、本当は、

「自分は何歳まで、どんな生活をしたいのか?」

から考えた方がいい。

そのうえで、

「その生活を実現するには、どのくらいの資産が必要なのか?」

を逆算する。

私は、この順番が大切だと考えています。

早期退職できるかどうかは、資産額だけでは決まりません。

資産、収入、支出、年金、運用、そして自分が望む人生。

これらを一緒に考えて初めて、「自分にとって早期退職が可能なのか」が見えてきます。


よくある質問

Q. 資産寿命とは何ですか。

資産が何歳まで持つかを表す考え方です。生活費、退職後の収入、年金、運用などをもとに、おおまかに計算します。

Q. 資産は何歳まで持てばよいですか。

一律の答えはありません。何歳まで、どんな生活をしたいかによって変わります。まず、自分が望む生活を決めてから、必要な資金を逆算します。

Q. 運用利回りは、何%で計算すればよいですか。

毎年同じ利回りになるとは限りません。運用しない場合や、年2%など、複数の条件で比べ、結果には幅があると考えます。特定の利回りを前提に、大丈夫だと決めることはおすすめしません。

Q. 年金は何歳から受け取れますか。

老齢年金は、受給資格期間(保険料を納めた期間などを合わせた期間)が10年以上あるなどの条件を満たすと、原則として65歳から受け取れます。希望すれば、60歳から65歳になるまでの間に受け取り始める「繰上げ」や、66歳から75歳までの間に受け取り始める「繰下げ」も選べます(生まれた年などにより異なる場合があります)。繰上げは年金額が減り、繰下げは増えます。減額・増額の注意点や仮の例は、本文の「年金は何歳から受け取ると、資産寿命の見え方はどう変わる?」の節で紹介しています。制度の詳細は、日本年金機構の「老齢年金」「年金の繰上げ受給」「年金の繰下げ受給」のページ(いずれも2026年10月10日確認)をご確認ください。

Q. 年金額は、どこで確認できますか。

「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で確認できます。日本年金機構の「ねんきん定期便」の案内(2026年4月1日更新、2026年10月9日確認)では、50歳以上の定期便に「老齢年金の種類と見込額」が載るとされています。また、ねんきんネットでは、条件を設定して将来の老齢年金の見込額を試算できるとされています。早期退職などで加入状況が変わると、実際に受け取る額は見込額と変わる場合があります。早期退職後の手続きは、早期退職したら、健康保険と年金は何をいつまでに手続きする?任意継続を選んだ私の場合で整理しています。


まとめ

早期退職を考えているなら、まず「資産がいくらあるか」だけを見るのではなく、

「その資産が何歳まで持つのか」

を一度計算してみてはいかがでしょうか。

そして結果を見ながら、

「あと何年働くのか」

「退職後はいくら稼ぐのか」

「年間いくら使うのか」

「どのくらい資産を残したいのか」

を考えていく。

シミュレーションは未来を予言するものではありません。

自分の人生について、納得できる選択をするための「考える道具」です。

自分の数字を入れて試したい方は、退職金・年金・資産寿命シミュレーション(無料)をお使いください。

自分の条件で資産寿命を確かめたい方は、老後資金・資産寿命シミュレーションのページもご覧ください。「いくらあれば足りるか」から考えたい方は、50歳で早期退職するには、いくらあれば足りる?辞める前に確認したい5つのお金もご覧ください。

※実際の資産寿命は、税金・社会保険料・年金額・運用実績・インフレ率などによって変わります。シミュレーションはあくまで一定の条件に基づく試算として利用することが重要です。

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金子英司(CFP®・FP1級)

金子FP事務所代表。28年間、営業・宣伝・マーケティングに携わり、50代で早期退職。資産運用と人生設計をテーマに、意思決定のための情報整理を発信しています。

※これは一般的な情報提供であり、個別の投資助言ではありません。

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